MARC RIBOT
マーク・リーボウ
変幻自在のギターのアルチザン。
ジャンル無用、全方位に向けられた多彩な音楽性を誇りながら、プレイスタイルは「器用」からは程遠い。変幻自在にして寡黙。融通無碍にして一徹。現在活躍するギター・ヒーローのなかで、マーク・リーボウはまったく独自の位置を占める。
1954年ニュージャージー生まれ。ティーン・エイジャーのときに、ハイチ人のギタリスト、フランツ・カセウスからギターの手ほどきを受けている。
長じてニューヨークにでてきたリーボウは、ウィルソン・ピケット、ルーファス&カーラ・トーマス等のバックを努めた後、84年、アート・リンゼイの後を継いでラウンジ・リザーズに加入。ジャズファンの間で注目を集めたが、その変態かつ革新的なプレイスタイルが、衆目の知られるところとなったのは、トム・ウェイツの名盤「レインドッグス」によってだった。
以後、ジョン・ゾーンをはじめ、ジョン・ルーリー、ジャズ・パッセンジャーズといったニッティング・ファクトリー周辺のジャズ・ミュージシャン、エルヴィス・コステロ、マリアンヌ・フェイスフル、スザンヌ・ヴェガといったシンガー/ソングライター、トリッキー、チボ・マット、フィッシュのトレイ・アナスタシオ、カエターノ・ヴェローソ、マリーザ・モンチなど、ジャンルを問わず幅広いアーティストたちと共演を重ね、ファースト・コール・ギタリストとしての地位を確固たるものとした。
さらに近年ではロバート・プラントのグラミー賞受賞作「レイジング・サンド」、エルトン・ジョン/レオン・ラッセルの最新作、矢野顕子、ジョー・ヘンリーの作品などにも参加し、メジャー音楽シーンにおいても存在感を放っている。
プレイヤーとして独自の個性を保ちながら、どんなジャンルの音楽にでも適応できるインテリジェンスと技量の高さは他の追随を許さない。現在の音楽シーンにおいて最もヴァーサタイルなギタリストと呼ばれるゆえんである。
真のアルチザンといっても過言ではない。
http://www.marcribot.com
The Prosthetic Cubans
Marc Ribot Y Los Cubanos Postizos
「えっ?あのマークがキューバ?」と驚きをもって迎えられた98年の1stアルバム。伝説的トレス奏者アルセニオ・ロドリゲスにオマージュというコンセプトを掲げるが、ジョン・メデスキ、アンソニー・コールマンが加わったアンサンブルが奏でる音は、ニューヨークそのものと言っていい。摩天楼の路地裏で夢みた幻想のキューバ。葉巻の煙の向こうから漂いだすがさついたバンドサウンドが、1940-50年代の麗しのハヴァナの空気感を現前させる。
Muy Divertido!
Marc Ribot Y Los Cubanos Postizos
「えっ?2作目があんの?」。前作を企画モノと思ってたファンに、驚きをもって迎えられた2000年のセカンド。前作のサウンドコンセプトを踏襲しながらも本作ではボーカルを前面に打ち出し、より広がりのあるアルバムに仕立てあげた。タイトルの「めっちゃ愉快!」が示唆するように、ゆるくけだるく楽しいプレイがてんこもり。虚空をみつめてラムを呷るにふさわしいのが前作なら、本作はナンパと喧嘩とバカ話に明け暮れる夜にお似合いか。